モテ系同期と偽装恋愛!?
前々から思っていたことだけれど、横山くんて頭がいい。
私が把握するのに30分は掛かりそうな情報も、彼なら10分ほどで飲み込めてしまいそう。
記憶力……というより、的確な判断力があって要領がいいのだろうと感じていた。
私が提供した葉王長野工場との取引に関する情報を大まかに把握し終えた彼は、幾つかの細かな質問を私にしてくる。
それまでパソコン画面と紙の資料にばかり向けられていた彼の視線が今は私に向けられ、勝手に心臓がドキドキし始めた。
仕事だからと自分に言い聞かせても動悸は収まってくれない。
質問に対する答え方がたどたどしくなってしまい、意に反して目も泳いでしまった。
すると、話しかける彼の声の調子が変わった。
耳の後ろをポリポリと掻いて、戸惑いがちに私に言う。
「あのさ……仕事だから、なるべく普通にしていてくれると、ありがたいんだけど……」
そう言われるということは、心の動揺が明らかに表に出てしまっているのだろう。
社内では自分を偽ることに慣れていたはずなのに、横山くんの前ではどうしてこうなってしまうのか……。
「分かってるわよ」と澄まして答えたつもりの声も、微かに上擦るのを自覚していた。
翌日、10時8分発の北陸新幹線の中に私はいる。
東京駅を出てまだ10分ほど。
長野までは後1時間半かかり、そこから目的地まではレンタカーで更に1時間半と長い道のりだ。
窓側の席に私、その隣に横山くんが座っている。
昨日『普通にしていて』と言われてしまったことを肝に銘じ、今日はまだボロを出さずにツンとした雰囲気と澄まし顔をキープできていると思う。
とはいっても、東京駅で横山くんと合流してから、まだ20分足らずなのだが……。