モテ系同期と偽装恋愛!?
窓の外に過ぎ行く景色はまだ東京。
見慣れた面白味のない景色を眺めながらも、右横に意識の大半が持っていかれてしまう。
横山くんは今、なにを考えているのだろう……。
心の中が落ち着かない私と違い、彼に緊張や不安は感じられない。私を特別意識しているふうもなく、あくびの音が聞こえるほどだ。
ということは、気まずさを感じているのは私だけということだろうか……。
『嫌い』と言ってしまった私の言葉は、今はもう、彼を傷つけていないと判断していいのだろうか……。
ひとりだけアレコレ考えてしまう私の横で、横山くんが姿勢を直した気配がした。
窓から彼の方に振り向くと、ほんの少しだけ背もたれを倒した彼が「寝てい?」と私に聞く。
「どうぞ、ご自由に」
寝てくれるとありがたい。会話せずにいても不自然じゃないし、少しは気を抜けるから。
「ん、ありがと」
ふたつの座席の背もたれにできた段差を利用して、そこに頭を固定した横山くんは、大きなあくびをした後にゆっくりと目を閉じた。
なぜか景色に視線を戻すことができない私は、寝ている彼を眺めてしまう。
足が長いから、膝が前のシートに当たって寝ずらいのではないだろうか。
着ているネイビーのスーツは社内でよく見かけるような色とデザインだが、モデル体型の横山くんが着ると、ワンランクもツーランクもお洒落で高級な品に見えてしまう。
見た目にカッコよく、人当たりのよい彼。
女子社員たちが騒ぐのも、分かる気がする……。