モテ系同期と偽装恋愛!?

須田係長は荷物をまとめ、明日持って行く資料などを私に押し付けると「よろしく頼む」と言い置き、走って帰ってしまった。

ファイルと資料を腕に抱えて立ち尽くす私。
その後ろに近づいてきた足音が止まり、声をかけられる。

「紗姫、葉王の長野工場に関して教えて」

「う、うん……」

「ミーティング室使おう」

ミーティング室はうちの部署の隅に設置されていて、正しくは部屋ではなく、非可動式のパーテーションで区切られた小スペースだ。

そこに移動する私たちに、周囲から好奇の目が向けられている気がした。

さっきまで須田係長のことで温かなお祝いムードに包まれていたのに、今はヒソヒソと……。

横山くんは総務の長谷川さんと別れたばかりで今はフリー。この出張で私たちに何か起きるのではないかと考える人もいるのかもしれない。

私に限って、そんなことはあり得ないのに……。


必要な物をミーティング室に持ち込む。

楕円のテーブルに椅子が6つ。
間に空席をひとつ挟んで私たちは横並びに座り、ノートパソコンと過去の資料、明日の資料を広げた。

大きな手が資料をパラパラと捲り、マウスを操って、横山くんは要領よく必要な情報を頭に入れていく。

仕事モードに入った時の彼は真剣で、甘口と言われる瞳の奥に、今は鋭い光を感じた。

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