モテ系同期と偽装恋愛!?
それを過ぎると旅館が4軒、軒を連ねていた。
今晩私たちが泊まる宿は一番手前にある『湯処 旅館 緑月』で、看板の"湯処"の部分だけペンキの色がやや新しめなのは、その下に書かれていた"温泉"の文字を消して、上書きしたせいだと私は知っている。
ここは昭和の終わりくらいまで小さな温泉街だったそうだが、残念ながら今は温泉が枯れてしまい、寂れてしまったということだ。
この辺りにビジネスホテルはないので、葉王の長野工場に出張の際にはここを使っている。
昨日のミーティング室での打ち合わせで宿の情報も話してあるからか、寂れ具合を見ても横山くんに驚いた風はなかった。
それどころか「いい所だな」と呟いているので、彼の海外出張での滞在先はもっと古めかしいのかもしれない。
旅館緑月の横の駐車場に車を止めて、熱い外気の中に降り立つと、去年との違いに気づいた。
あれ……車の台数が多い気が……。
部屋数はたしか20ほどのこの旅館。
去年は私と須田係長以外の客は2、3組しかいなくて、無駄に広いこの駐車場には、私たちのレンタカーと旅館の名前の入ったワゴン車しか停められていなかった。
それなのに今年はなぜか10台も車が停められているのだ。