モテ系同期と偽装恋愛!?

よく見ると、隣の旅館の駐車場も同じ感じで、観光客らしき団体の姿まで見受けられた。

不思議に思いつつも一泊用の荷物を降ろして、駐車場から旅館の中に足を踏み入れる。

去年は暇そうにしていた旅館のご主人がすぐに出迎えてくれたのに、今年はそれもない。

小さなロビーには浴衣を着た高齢男性ふたりがソファーに座ってテレビを観ていて、「ここはなんもねーな」とひとりが言うと、もうひとりが「昨日じゃなく今日から泊まればよかったな」と答えていた。

そう、ここは温泉も湧かない何もない旅館。
それなのに、なぜ観光客がいるのだろう……。

カウンターに従業員の姿がないので、横山くんが呼び鈴を押してくれた。

しかし、20秒待っても30秒待っても誰も出てこない。

なぜか繁盛しているようだし、忙しいのだろうか……。

横山くんと顔を見合わせ首を傾げてから、今度は私が呼び鈴を鳴らしてみた。

するとカウンター奥の暖簾をくぐり、やっとひとりの従業員が出てきてくれた。

「はい〜いらっせぇまし〜」

しゃがれた声でそう言ったのは、腰の曲がったおばあさん。

80後半……いや、90歳を超えていそうだと感じるのは、足もとが危なげに見えるせいかもしれない。

この宿のご主人の祖母だろうかと予想しつつ、現役は退いているであろうおばあさんにまで手伝ってもらうほどに忙しいのかと驚かされた。

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