モテ系同期と偽装恋愛!?
カウンターの横の壁には、A3サイズのポスターが一枚貼られていた。
そこには筆字で『豊年男根祭り』と書かれ、背景のカラー写真には奇妙な神輿を担いで歩く、揃いの着物姿の女性たちが写っていた。
五穀豊穣を願う豊年祭だけなら理解できるが、男根て……。
神輿の形もどう見ても男性にしか付いていないアレで、私にはこの神輿を担ぐ勇気はない。
ポスターには5年に一度の奇祭と説明書きが添えられ、今夜は前夜祭としての花火大会が河原で行われ、明日と明後日が神事と神輿行脚というスケジュールも書かれていた。
この鄙びた元温泉街が盛況な理由は、どうやらこの奇祭があるかららしい。
そして私と横山くんは、子宝に恵まれたくてご利益に与りに来た、新婚夫婦に間違われたようで……。
おばあさん相手に強く否定するのは躊躇われたが、話を合わせてあげることは出来ない私。
どうしていいのか判断できずに隣を見ると、横山くんも同じように困った顔をしていた。
私と目が合うと彼はコホンと咳払いをして、おばあさんに言う。
「取り敢えず、荷物の預かりと宿泊予約者の変更をお願いします。
チェックインは夕方か、もしかすると夜中になるかもしれませんが……」
ふたつの鞄をカウンターの内側へ自分で運び入れてから、夫婦を訂正できないままに私たちは宿を出る。
足もとが覚束ないのでどうかカウンターから出ないで欲しかったが、おばあさんはホエホエと笑いながら玄関先まで出てきて見送ってくれた。