モテ系同期と偽装恋愛!?
そんな風には見えなかったが……彼女たちは言い訳した後、そそくさと自分の席に戻ってしまった。
男性社員も始業の準備に入るために、私たちから離れて行く。
囲いがなくなると繋いでいた手がやっと外され、ズボンのポケットに手を突っ込んだ彼が私だけに笑顔を向ける。
「な、大丈夫だろ? 皆んな、いい奴だよな。
女の子も俺たちを応援してくれるって」
それは遼介くんが、意地悪したら軽蔑するような発言をしたからで……。
遼介くんの彼女の座を狙っている女子社員からすれば、彼に嫌われることが一番の痛手。
私に嫉妬の感情をぶつけるよりも、軽蔑されない方を選ぶのは当たり前だ。
そのことを分かって言ったのか、そうじゃないのかは彼の表情から読み取れない。
それでも、また守られてしまったことは確かで、感謝とモヤモヤする気持ちを抱えながら、彼から離れて私も自分の席へと戻ろうとした。
すると通路の途中で、今出社してきたばかりの桃ちゃんと鉢合わせる。
「遅刻するかと思ったー」と額の汗をハンカチで拭う彼女は、複雑な表情を浮かべる私に首を傾げる。
「どした?」
「うん、ちょっと、お昼休みに相談したいことが……」
遼介くんとの出張でのやり取りや交際については、日曜日に電話で報告済み。
桃ちゃんは前々から彼の気持ちを知っていたそうで、さほど驚きもせず、『遼介、やるじゃん』と言っただけだった。
なので、相談したいこととはそれではなく、今ふと疑問に思ったことについて。
遼介くんて、一体……。
彼の周囲にいると、皆んな善人に変えられてしまいそう。
長野出張において、初対面の人と打ち解けるのが異様に早いという特技をもっていることを理解したが、相手の悪意を消してしまうことも、彼の特殊能力のひとつなのだろうか……。
遼介くんのことを、もっと知りたい。
桃ちゃんなら、私より仲がいいから分かるはずだよね……。