モテ系同期と偽装恋愛!?

不安げなリズムを刻んでいた鼓動が、徐々に落ち着きを取り戻していく。

この前もそうだったが、長谷川さんは私と遼介くんの話をしたいみたい。

どうしてそういう気持ちになるのか分からないが、桃ちゃんみたいになれない気弱な私は困るばかりなので、やめてほしかった。

早く総務部の前から離れたくて、早足で廊下を進む。

大会議室の前を通って、廊下の角を曲がろうとした。

すると、運悪く同じタイミングで角を曲がってこっちに来た誰かと、肩をぶつけてしまう。

ドンとぶつかったのは、名前は覚えていないが、総務の一年生男性社員。

彼が抱えていたファイル数冊が床に散らばってしまった。

私も早足だったが彼も急いでいたようで、結構な衝撃でぶつかった後は、体格差で私が弾かれて尻餅をついてしまった。

「わぁ! すみません、大丈夫ですか? 本当にすみません!」

私も悪いのに、何度も謝ってくれる彼は、パニックともとれる慌てよう。

謝りながら私の背後に回り、突然脇の下に両腕を差し込むと、助け起こそうとしてきた。

悪気がないのは見て分かる。
でも、思いっきり胸を触っているのだけれど……。

立ち上がらせてもらった後、私は言葉を発することができずに固まっていた。

彼は床に散らばっていたファイルを搔き集め、深々と頭を下げてもう一度謝ってから、走って総務部の中に消えて行った。

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