モテ系同期と偽装恋愛!?

「横山さんが総務に用事なんて、珍しいですね」

「そ、そうね。もう終わったので戻ります」

軽く会釈して、彼女の横をすり抜けようと爪先を斜め前に向けたのだが、彼女が一歩横に移動して、進路を塞がれてしまった。

さっきより縮まってしまった彼女との距離。
戸惑いながら視線を合わせると、ニッコリと笑顔を向けられた。

「遼介くん、今、海外出張中ですよね」

「昨日までです。今日は午後から出社予定で……」

「そうなんですか! よかったですね〜。
長く会えないと淋しくなりますよね」

にこやかに話してくれても、私は笑顔を返せなかった。

淋しくなりますよねと、同意を求められても頷けない。

淋しくないわけじゃなく、彼女と話を合わせてしまうと、ここから立ち去れなくなってしまいそうな気がして。

返事をしなかったことで、長谷川さんの笑顔が急に曇る。

「横山さんは淋しくないんですか……。
私は1日会えないだけでも淋しかったのに……」

どうやら無言でいたことで、彼がいなくても私は平気だと思わせてしまったみたい。

それについて明らかに不満そうに口を尖らせた後、彼女は私を解放し、「呼び止めてすみませんでした」と謝ってから総務部の中に消えて行った。

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