モテ系同期と偽装恋愛!?

そんな不満と疑問を感じても、私からは話しかけない。彼はなるべく関わりたくない人だから。

気にしないようにと再度心に言い聞かせ、自分の作業に気持ちを向ける。

鞄の中から取り出したのは、小さめサイズの花切りばさみ。

買ってきた5種類の花をテーブルに並べると、はさみで適度な長さにカットして余分な下の葉を落とした。

濃淡の異なる3種類の青い花と2種類の白い花を、花瓶に挿していく。

左右対称に、手前は低く奥は高く。
たくさんの小花の付いた枝を整え、全体をこんもりとした丸い形に仕上げていった。

すると、それまで黙って見ていた横山くんが急に動いて隣に立つから、内心ビクリとして身構えてしまう。

「こうした方が面白いんじゃないか?」

男らしく節立つ長い指が、花瓶の花に向けて伸びてきた。

手と手が触れそうで慌てて引っ込めてしまった私だが、そんな失礼な態度に文句をつけることなく、彼は花を弄り始めた。

左右対称に形を丸く整えた私と違い、彼の生け方はかなり大胆だ。

左側の花を全て右に寄せ、斜め下に流れるような曲線を形作っていく。

いつになく真剣な目をしている彼の横顔に、心臓がドキンと跳ねた。

綺麗な顔……。

彼は美形だ。憧れはしないが、正常な美的感覚は持ち合わせているのでそう思っている。

5年ほど前から知っているはずの彼の美しさに、なぜ今頃改めてそう感じたのか……自分の気持ちに首を傾げる思いがしていた。

濃淡のある青系の花と2種類の白い花、合わせて15本を挿し終えると、横山くんは一歩後ろに下がって全体の印象を確かめ、満足げに頷いた。

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