モテ系同期と偽装恋愛!?
「どうよ」と彼は腕組みして問う。
作品をじっと見つめること数秒。
「風が吹いているみたい……」
私の口から、そんな感想がこぼれ落ちていた。
風にそよぐ花か、それとも水の流れというべきか……。
私が生けたものよりずっといい。
涼しげで夏の暑さを忘れさせてくれるような花瓶の花に、思わず「素敵……」と呟いてしまった。
言ってしまってからハッとする。
高飛車女ならこんな言葉ではなく、余計なことをしないでと言うべきところだろう。
失言に気付いた後は焦って「まあまあね」と言い直し、切った枝葉をビニール袋に入れて片付け始める。
すると横山くんが、声を上げて笑い出した。
「紗姫ってツンデレ? デレの部分を隠さないでもっと見せて」
「デレ? そんな部分、持ってないわよ」
「またまた〜。実は映画観て泣いたりするタイプなんだろ」
からかわれているだけだと分かっていても、言い当てられて内心ギクリとしていた。
映画もドラマも、子供向けアニメでも、よく泣く私。
特に人情物の話や子供関係の話は、ボロボロと涙がこぼれて止まらなくなる。
3日前にテレビ放送された、子供が初めてお使いに出て頑張るバラエティ番組も、目が腫れるほどに泣いてしまった。
だから映画館には行かない。泣くことが予想される物語は、家でひとりで観るに限る。