モテ系同期と偽装恋愛!?

横山くんの言葉に、片付けの手が一瞬だけ止まってしまったのも悪かった。

それを見逃さなかった彼に「マジでそうなの⁉︎」と喜ばれてしまい、困った私は無理やり話題を逸らそうとした。

「違うわよ。勝手な推測はやめて。
私をからかうことより、横山係長には他に考えるべきことがあるでしょう?」

「他に考えることって?」

「さっきの長谷川さんとのこと。付き合ってひと月足らずで、あんな振り方をするなんて可哀想。今までの彼女とも似たような別れ方をしているんですってね。あんな別れ方をするくらいなら最初に振られる方がマシだわ」


話題を逸らすために言い出したことだが、なにを言っているのだろうと、心で非難する自分も同時に存在した。

恋愛経験のない私が恋愛を語ることに違和感を感じるし、そもそも無関係の私が口を出していい問題でもない。

初めに振られるよりは、たった1ヶ月でも彼と付き合えてよかったと、長谷川さんは言うかもしれないし。

それでも一度言い出したことに引っ込みがつかず「女性との付き合い方を再考して」と、こんな私が彼を指導する。

花切りばさみの刃をティッシュで拭いてケースに入れ、鞄にしまう。

横山くんのことだから私の意見なんか心に留めず、すぐに茶化したりからかったりしてくるだろうと思っていた。

反論の言葉に皮肉も付いてきそうな気もする。

< 28 / 265 >

この作品をシェア

pagetop