モテ系同期と偽装恋愛!?

なにを言われても動じないように心構えをしていたのだが、いつまで経っても彼は口を開かなかった。

形を崩さないように気をつけて、花瓶をそっと後ろの演説台の上に移動させる。

それでもまだ横山くんは黙ったままで、予想通りの展開にならないことに戸惑い始めた。

怒らせてしまったのだろうか……それとも傷つけてしまったのだろうか……。

余計なことを言ったのは元から承知だが、それ以上のひどい言葉を浴びせてしまった気がして、彼の心を心配してしまった。

恐る恐る振り向いて彼の顔を伺うと……なぜかポカンとして私を見ている。

鳩が豆鉄砲を食ったようなと言いたくなるその表情に、私の方が意表をつかれて困惑してしまった。

「ど、どうしたのよ……」

問いかけるとハッと我に返ったような顔をして、横山くんは片手で自分の髪をクシャリと握りしめた。

「や……なんていうか、驚いて。
紗姫って、俺に無関心なものだと思っていたからさ。本当は色々と知っていて、気にしてくれていたんだなと……」

照れ臭そうにそう言ってから、彼は嬉しそうな顔をしてニッコリ笑った。

それは皆んなの輪の中で談笑している時と同じ、屈託のない少年のような可愛らしい笑顔。心なしか、頰が赤く染まっている気もする。

釣られて笑いそうになる表情筋を引き締めつつ、気にしてくれていたんだという、彼の発言に引っかかっていた。

まさか、私が横山くんのことを密かに想っていたとか……勘違いしているわけじゃないよね?

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