モテ系同期と偽装恋愛!?
芽生えた疑惑に心は慌て、急いで反論した。
「横山くんのことなんて、これっぽっちも気にしたことないわよ。変な言い方しないで」
するとそれまでいい顔して笑っていた彼が、急にニヤリと意地悪く笑う。
「ツンデレ紗姫ちゃん、"係長"が抜けてるよ? 心の中では今も横山くんと呼んでくれていたんだな」
「あ……」
「係長をつけられると益々距離を開けられた気がして嫌だったから、嬉しいな。できればそこから一歩踏み出して、遼介くんにしてみない?」
「なに馬鹿なことを言って……」
「紗姫って、浅倉の前では普通に可愛く笑うだろ。俺の前でもそうしてよ。同期だから、紗姫とは仲良くなりたい」
横山くんと話すのは、本当に苦手だ……。
女子に人気のある彼と仲良くなったら、たちまち私は女子社員から敵認定されるのに。
辛い学生時代を繰り返さないために身に付けた高飛車女という仮面を、外そうとしないでよ……。
困ってしまい視線を床に落としたら、大きくて黒い彼の革靴が、私との距離を半歩縮めるのを見てしまった。
1メートルもない私たちの距離に、頭の中に警笛が鳴り始める。
過去の経験上、この後危険な展開になりそうな気配を感じ取っていた。
怖い……男の人が怖い……。
たとえ横山くんがモテる人ではなくとも、意地悪を言わない優しい人であっても、私にとっては男性というだけで恐怖の対象になる。
男性に関わると、ろくなことにならないと知っている。同期としてと前提を付けられても、仲良くしようなんて無理難題言わないで……。