モテ系同期と偽装恋愛!?
発注伝票の整理を終えてファイルを閉じ、腕時計を見ると、15時になっていた。
チラリと横山くんの席に目を遣ると彼はいない。
この時間、会議の予定はなく、外勤予定も今日はないのに、どこに行ったのか……。
でもうちの部署で一二を争うほどに忙しい人だから、社内のどこかで働いていることは確かだ。
横山くんのことを気にしてしまったのは、今朝のことが原因だった。
いつもの意地悪な絡まれ方をされただけなら、ここまで気にならないことだろう。
満面の笑みを浮かべる彼の顔を思い出していた。
私と仲良くしたいという、無茶な言葉も。
幸い業務が始まってからの接触はなく、乱されそうになった心も落ち着き、今はホッとしている。
このまま終業時刻まで、彼が戻ってこなければいいのにと思っていた。
何気なく視線をドアに流したら、ここからドアまでの直線上にある桃ちゃんのデスクで、足もとの鞄の中からお財布を取り出している桃ちゃんの姿が見えた。
それから彼女は私の方を振り向いて、口パクで「行くよ」と誘う。
私が軽く頷くと桃ちゃんは席を立ち、ファイルを片手にドアの外へ出て行った。
それから1分待って、私も同じ行動を取る。
1階に降りて自販機で缶のレモンティーを買い、エレベーターで4階へ。
大会議室のドアをそっと開けて中に身を滑り込ませ、後手にドアを閉めると、心に開放感が広がった。