モテ系同期と偽装恋愛!?
緩んでいた気を引き締めて、笑顔を消した。
そんな私と視線を合わせる彼の顔が、微かにかげったように感じた。
会議用テーブルの間を真っすぐに歩いてきた横山くんは、最前列のテーブルの前に立ち、私たちと向かい合う。
「何しに来たのよ」と桃ちゃんが言う。
「さぼり組みを注意しに」
「さぼってないし。ほら、これ見てよ」
桃ちゃんが持ち上げたのは青いファイルで、取引先の大手国内メーカーの工場の名前が表紙に書いてある。
今まで誰かに踏み込まれたことはないが、見つかった時のための言い訳として、一応仕事道具を持ってくることにしている。
ふたりなのに大会議室を使用していることや、お菓子を広げていることなど、突っ込みどころが満載なのも分かっているけれど……。
桃ちゃんも横山くん相手に本気で仕事中だと言い張るつもりはないようで、ファイルをテーブル上に戻した後は「食べる?」とチョコレート菓子の箱を勧めていた。
「サンキュ〜」とお菓子を摘んで口に放った彼に、「これで同罪だね」と桃ちゃんが笑顔を向ける。
しまったと言いたげな顔をして「やられた、チクれないじゃん」と文句を言う横山くん。
元から告げ口する気はないし、されるとも思っていないふたりは、そんなコントみたいなやり取りをした後、仲よさげに笑い合っていた。