モテ系同期と偽装恋愛!?

桃ちゃんは姉御肌で頼りになるなる人だが、実は面倒臭いことが嫌いだったりする。

仕事面でいうと、新しいプロジェクトに参加することを好み、数値をパソコンに入力するだけの雑務が嫌いなタイプ。

私は後者の方が向いているので、そういう面でも桃ちゃんに憧れるのだが……今、横山くんのことを面倒臭いからと投げ出されては、物凄く困ってしまう。

「も、桃ちゃん、待っ……」

待ってと全てを言わない内に、彼女は廊下に出て行ってしまい、ドアがバタンと閉められた。

怒ってる……。
約5年の付き合いなので、怒る姿を見るのはこれが初めてではない。

前回は確か半年ほど前で、仕入先との価格交渉をまとめて出張先から帰ってきた翌日、桃ちゃんのもとに「やっぱり0.1%値上げさせてくれ」と仕入先から電話が掛かってきて、ブチ切れていた。

般若の顔した桃ちゃんに、あの日は誰も話しかけられなかった。当然、弱虫の私もビクビク怯えていただけで……。

今回の怒りの程度はどのくらいか、すぐに機嫌を直してくれるだろうかと、椅子に座ったまま体を捻って振り返りながら心配していた。

すると、会議用テーブルが軋む音がした。

「やば、マジで怒らせちまった」

そんな声がすぐ近くに聞こえ、驚いて前を向くと、横山くんが私の目の前のテーブルに、こっちを向いてどっかりと座っていた。

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