モテ系同期と偽装恋愛!?
広げた長い足は私を間に挟んで、まるで閉じ込めるかのように椅子の左右に垂れている。
心臓が大きな音を立て、鼓動がたちまち速度を上げていく。
逃げなくてはと思い、体を横に動かそうとしたが……気配を察知したのか、垂れていた彼の両脚が伸ばされ、靴の底を私の後ろのテーブルに付けて、本当に閉じ込められてしまった。
「な、なによ、この格好……」
文句を言う声が、少しだけ震えてしまった。
「んー、浅倉に怒られたから、自分でなんとかしようと思って」と、意味の分からない答えが返ってくる。
広げた長い足で私の逃げ道を塞いだまま、笑顔の彼は攻撃の矛先を向けてきた。
「俺、紗姫と飲んでみたい。お前ってさ、1年目の歓迎会以降、どんな飲み会にも不参加だよな」
「そ、そんなことないわよ。取引先となら、数回あるから」
私にも国内出張が年に数回ある。
お客さん相手では嫌と言えず、誘われたら地方の居酒屋とかスナックとかに行かざるを得ない。だから出張が嫌いだったりするのだけれど……。
澄まし顔をキープするのが難しくなってきた。
怖い……ここから逃げ出したい……そんな泣きたくなる気持ちと必死に戦っていた。
しかし、私が怯えていることなど全く気づいていない彼は、攻撃の手を緩めてはくれない。