モテ系同期と偽装恋愛!?

「いい顔してた」と言う彼の手にはスマホが。

ニッと笑って見せられたのは、柔らかく微笑む私の横顔だった。

「消してよ」

「やだ。紗姫の笑顔は貴重だから、デート記念に保存しておく」

「勝手に記念日作らないで」

「そう怒るなって。俺はただ、紗姫に楽しんでもらいたいだけなんだ。さっきみたいに笑っていれば、自然と周りに人が集まってくるのに」


横山くん……。
彼の気持ちが心に刺さる。

前に、同期として仲良くしたいと大会議室で言われた。

時々絡んでくるのも無理やりデートに誘うのも、もしかすると彼の優しさなのだろうか……。

ツンケンした態度で距離を置くよりも、笑顔で皆んなの輪の中に入りなよと言っているのだろうか……。

その気持ちは嬉しいけれど、やっぱり困る。
壁を作らないと身を守れないから。

辛い過去に戻らないために、仲良くすることはできないんだよ。特に横山くんのような男性とは……。

ミニSLは公園の木々の間を走り抜ける。

木陰の涼やかな風が頬を撫で、私の焦げ茶色の長い髪を後ろになびかせていた。

優しい笑顔を向けてくる彼に、気づけば「ありがとう……」とお礼を言ってしまっていた。

彼の眉が少し上がり、意外そうな目で見られてしまう。

いけない……素直にお礼を言うなんて、私のキャラじゃなかった……そう気づいて慌てて言葉を付け足す。「その画像、他の人には絶対に見せないでよね」と。

どうも横山くんといると、調子が狂う。
仮面がずれて、素顔を見られてしまいそうで焦ってしまう。

「えー、紗姫がこんなふうに笑うところ、皆んなにも見せてやりたいのに」

「ダメよ。今日のデートについても口外禁止」

「もし、話したら?」

「二度と横山くんと口きかない」

「それは嫌だ……」

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