モテ系同期と偽装恋愛!?
理由は聞かれず「ん、分かった」とだけ言って、彼は池から私に視線を流した。
じっと見られると食べ難いのに……そう思いながら、残りふた口のホットドッグを食べ終え、アイスティーで喉を潤す。
すると、まだ私に視線を止めている彼が、クスリと笑いながら言った。
「ケチャップ、ほっぺに付いてる」
その言葉と同時に腕が伸びてきて私に触れようとするから、急に緊張が走り、慌てて体を横にずらしてその手を避けた。
「触ったら、デートはお終いって言ったでしょ!」
「えー、ケチャップ拭いてやろうとしただけなのに?」
「自分で拭く。下心がないのは分かっているけど、とにかく触らないで」
「なんか……振り出しに戻された気分……」
急いでバッグの中から鏡を取り出し、顔を映す。
確かに左頬に、薄く線を引いたようにケチャップが付いていた。
子供みたいで恥ずかしいと思いながらティッシュを出し、鏡を見ながら拭き取る。
すると、「使ってくれてんだな、それ……」と呟く声がして、ハッと気付いた。
顔を映している鏡は、横山くんがインド出張のお土産にくれた布張りのコンパクトミラーだ。
あえて持ってきた訳ではなく、このバッグが通勤用のもので、コンパクトミラーをもらった日からずっと、入れっぱなしにしていたのだ。
だから、深い意味はないのに……。