モテ系同期と偽装恋愛!?

しまった……今、横山くんの存在を忘れていた……。

ふと過去を思い出してしまったら、いつもこうなってしまう。

苦しさが蘇り、とにかくそこから逃げ出したくて周囲を気にすることを忘れてしまうのだ。

心配そうな目を向けられて、どうしようと心の中でうろたえる。

過去の思い出から逃げたくて……とは説明できないので、「これに乗りたくて」と一番近くにあった乗り物をつい指差してしまった。

あ……これ、観覧車だ。
一番避けたい乗り物を指差してしまったことに気づき、今度はそのことでうろたえた。

密室空間に男性とふたりきりになるのは出来るだけ避けたい。横山くんに下心がなくても、不自由な私の心が勝手に怖がってしまうから。

やっぱりミニSLに……と言い直そうとしたが、先に横山くんに「俺も乗りたい」と言われてしまった。

「これ乗ったら帰るか。昼間のデートって約束だしな。締めはやっぱ観覧車だろ」

「そう、だよね……」

これに乗ればデートはお終いで、帰ることができる。そのことにホッとして、観覧車に乗ろうという気分になった。

一周たったの10分ほどだもの、それくらいは耐えられる……と思いたい。

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