モテ系同期と偽装恋愛!?

なるべく横山くんのことを考えないようにしなければと、ゆっくり上昇する景色に意識を集中させようとする。

地上15メートルほど上がったところで、遊園地全体が見えてきた。

ゴーカートのクネクネ曲がるコースを上から見下ろすと、黒い蛇みたい。

下からでは分からなかった、メリーゴーランドの屋根に描かれた絵も見えた。

紺色に塗られた丸い屋根に、散りばめられた星と三日月の絵。

子供の頃はこの絵を綺麗な夜空だと感じていたはずなのに、今はそう思えない。

昔と変わらない絵柄を見て、メリーゴーランドの屋根はずっと夜のままなのかと考えてしまう。

太陽が昇り、朝がくる日は、永遠に来ないのかと……。

暗い考え方をしてしまうのは、きっと不安のせい。

横山くんはなぜか話しかけてこない。
その代わりに、観察するような彼の視線を、さっきからずっと視界の隅に捉えている。

それに気付かないフリをしているが、私じゃなく外の景色を見ればいいのにと、心の中で不満を呟いていた。

ゴンドラはどんどん上昇し、広い公園の全体が一望できるほどになる。

公園の風景は平和に見えた。木々の緑と池の青、空の水色、そのコントラストに少しだけ緊張が和らぐ気がしたのだが……。

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