モテ系同期と偽装恋愛!?
「直接触ったら怒られるから、シャツ越しな。
こうすれば、少しは安心できるだろ?」
抱きしめてきた理由は、下心ではなく、彼の優しさ……。
それを理解したが、こんなことをされたら更に恐怖が増すばかり。
震える手で彼の胸もとを押し返そうとしたが逆効果で、私を抱きしめる腕に更に力がこめられてしまった。
布越しに筋肉質の身体を感じてしまい、心の中はパニック寸前。
頬は彼の鎖骨付近に押し当てられ、甘い香水の匂いがハッキリと感じられた。
「大丈夫だよ……」という低い声を耳もとで聞いてしまうと、恐怖に息ができないほどになる。
「や、やめて……離して……」
震える涙声で懇願するが、横山くんの腕は解けない。
「こんなに震えてんのに強がるなよ。
もうすぐ着くから、それまでこうしてた方がいいだろ」
違う……違うのに……。
私は横山くんが怖いんだよ……。
ついに溢れ出した涙が、水色のシャツに吸い込まれていく。
それが彼の肌に伝わってしまったようで、「泣いてんの……?」と驚いているような、心配そうな声で問いかけられた。
「お、お願い離して……もう、限界なの……」
尋常じゃない震えと涙。
心配してくれる彼の腕を拒む台詞。
横山くんも何かおかしいとやっと気づいたようで、腕の力が急に緩んだ。
もがくように急いで彼から離れ、向かいの席に避難する。
震える手で被されていた水色のシャツを頭から外したら……涙で滲む視界の中で、戸惑う彼の視線と目が合ってしまった。
「まさか……紗姫って……」