それは秘密です
「だけど俺は好きになれないんだよね。その点、佐藤さんはさっきの自己評価でも分かるように奥ゆかしくて控えめで、まずそこが俺好みだった訳。そんで更に気になる存在にさせたのは、去年のある出来事なんだけど」
「え?」
「覚えてるかな?やっぱりキャンペーンがあって、その時に雇ったスタッフの一人が体調を崩して早退して」
「あ、はい。覚えてますよ」


っていうか、最初はその話だと思っていたし。


「その子がタオルを忘れて、自宅に配送してもらうべく人事課を訪れたら、課長が佐藤さんにその役目を託したんだよね。それで君、その時に一筆書き添えたんだって?」
「え?あ~…」


言われて記憶が徐々に甦って来た。

タオルだけポンと送る訳にもいかないので手紙を添えて、ついでにそこに『まだまだ暑いのでくれぐれもお体ご自愛下さい』とか何とか書いたような気がする。

一字一句、正確には覚えていないけど。


「後日、その子からお礼の電話が来たんだよね?『ご迷惑をおかけしたのに、そんな優しい気遣いをして下さってありがとうございました』って」
「え、ええ」


最初課長が対応して、その後私に電話が回されたので上の人にもバッチリ情報が伝わり、お褒めの言葉を頂いたりしてしまった。


「え?じゃ、その時のエピソードを…」
「うん。課長から教えてもらったんだ」


そこで加東さんは思い出したようにコーヒーを一口すすってから続けた。
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