それは秘密です
そんな目で見下ろされるのはすこぶる気に入らない。


「……さてと。そろそろ帰ろうかな」


言いながら俺は足を踏み出し、加東の鼻先までずいっと接近して囁いた。


「とにかく勝負は俺の勝ち。佐藤はもう俺の物ですから。二度とちょっかい出さないで下さいよ」


一瞬気圧されたような表情になったが、加東はすぐに自分を取り戻し、問いかけて来た。


「一体どんな手を使ったんだ?」

「……はい?」
「さっき何か言いかけただろ。聞き逃さなかったぞ」


彼と会話しつつも俺は心の中で別の事を考えていた。

この上なく不本意だし癪だし悔しいけれど。

やっぱこうして見ると、同性でも惚れ惚れするくらい、男前なんだよな、この人って。と思う。

声だって低くて超渋いし。

こんなことがなければ、尊敬できる大好きな先輩として無邪気に慕っていられたかもしれない。

可愛い後輩でいられたかもしれない。


「どんな裏工作をして、佐藤さんの心を手に入れたんだ」


彼女についた嘘の中にも、ナノレベルの本音がひっそりこっそり紛れ込んでいたって訳だ。


「さぁ?どうでしょう」


だけどもちろんそんな感情はおくびにも出さずに。

俺は自分でも、さぞかし嫌味ったらしくてこ憎たらしく感じるだろうなと自覚できる笑みを浮かべながら答えてやった。


「それは秘密です」
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