~赤い月が陰る頃~吸血鬼×妖狐執事
午後の授業も無事終わり、帰る準備を進めていると、
ふと机の上に、血色のいい手が遠慮がちに置かれる。
手をとめて顔をあげると、昼休みの時の男と目が合う。
「さっきはごめんね、いろいろと」
「……いえ。」
それだけを告げ、カバンを持ち上げて教室を出ようとドアノブに手をかける。
「待って。」
とっさに手首をギュッと握られた。
「……?」
私は疑問符の浮かぶ顔で、男の顔を見つめる。
すると、
少し赤く染まった顔で、慌てて手を離された。
「あ、いや。その……」
「あ、そうだ。俺の名前は大神 絋(おおがみ こう)。
よろしくね、九条さん」
あたかも、僕が太陽ですとでも言わんばかりの
無垢で屈託のない笑顔を向けられる。
「……ご丁寧にどうも、ありがとう」
私は少し嫌味を混ぜてそう言い放った。