社内恋愛発令中【完】
見上げると、サラリーマンらしき人が、1人の男の人を見ている。



「手、当たってますよ」



「あ、いや…申し訳ない」



その瞬間、太ももに感じていた違和感がフッとなくなった。



(当たってるってもしかして…あたしのこと?)



助けてくれたと思われる男の人を見上げ、探るように首をかしげる。



男の人は景色を見ていた目を、ゆっくりあたしに向けた。



「あ…」



お礼を言おうとした瞬間、駅到着のアナウンス。



人の波に押され、電車の外へ押し出されるあたし。



男の人はそのまま降りてどこかへ消えてしまった。



20代前半から半ばに見えた。
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