太陽と月の後継者
『ライト…
エミリアの姫のことも、私の正体も
全部、わかった。』
ライトは分かっていたように、
そして悲しそうに微笑んだ。
「こんなにも早いとは思ってなかったよ。
まだ君には話さないといけないことがあるんだ。」
クロエははっきりと頷く。
「君が気になっていることだと思う。
何故、私が“時”を操れるのか。
それは、光属性を束ねる妖精族は太陽に関係するからだ。クロエが太陽神の化身だとはもう知っているね?」
『え…でもあれは』
「本当なんだ。
君の前世は、神の子だった。
そんな神の子を祖先に、そしてクロエと同じ魂を持った君は太陽神そのものだ。」
クロエは、無言でライトの話に耳を傾ける。
もうある程度の話には驚かない。
「そして、太陽の力を直接受け継いだ属性、火と光とそして闇は特別に神の手を借りることを許された。
その一族が、朱雀族、妖精族、悪魔族。
借りる方法はふたつ。
一つ目は、クレア自身に触れて魔法を使うこと。二つ目は…血を飲み続けること。」
ライトは瞳を曇らせた。
クロエとはと言うと、少し顔を顰めただけ。
「天羽の血は寿命を伸ばしたりするだけじゃなかった。天羽とはつまり神の血、朱雀族や妖精族、悪魔族に六つの属性と“時”を操れるようにしてしまう。
力を増幅させるんだ。
ただし、長くは続かないから定期的に飲むしかない。
それを知っているのは、
私とビオラ、ビアンカの兄と朱雀族。
朱雀族が何か恐ろしい事を企んでいるのだとすれば、君は利用されてしまう。彼らは自分達が神に選ばれた民だと信じているからね。」
苦しそうに喋るライトに、何時もの強さは感じられない。
「知っていて欲しいんだ。
私達妖精族と、悪魔族はいつでも君の味方だ。
そして、救って欲しい。
私の友を…。」
『友って…ビアンカの…?』
ライトは深く頷いた。
クロエは、ライトの肩をぽんと叩く。
驚いたように彼女を見た。
『大丈夫、大丈夫。
私には貴方達妖精族、それにビアンカやリオ、ヨウテス、…ルカ、瑞や蓮さん。
それに、魔法使いの仲間
そして…レイ。
沢山の人が私の味方でいてくれる。
それだけで、私は強くなれる。
だれにも負けやしないよ。
負けてたまるか。
必ず、全部取り返してみせるから。
私のまだ知らない過去も、
ビアンカのお兄さんも、
みんなの消えた未来も全部。
取り返してみせるから。
信じて。
私、“クロエ”を信じて。』