Love Cocktail
「場所がうちの部屋だからか……。改めてオーナーって大きいな……と」

ワンルームの狭い部屋に、長身のオーナーがいるだけで少し圧迫感があって、なんだか不思議な感覚だ。

「改めさせられたのは、お互い様だな」

軽く頷いて、彼はさっさっと玄関に向かった。

お互い様? それはどういう意味ですかね?

慌ててバックを持つと、その後をパタパタと追って、急に立ち止まった背中に激突する。

「今度はなんですか?」

オーナーは壁の方を見ていた。

「……絵が好きなのか?」

「あ。それですか!」

殺風景なその壁に、写真立てに入れた一枚の絵葉書を飾っていた。

「誰が描いたのか忘れましけど、美術館で気に入って買ったものです」

難しいことはまったく解らないけど、柔らかいタッチが好きでなんとなく買った一枚だった。

「ああ……。美術品を買う正常な買い方だ」

呟くと、またスタスタ歩いて靴を履き、さっさと玄関から出ていってしまう。

……い、意味が不明です!

さっきから何なんですか! その行動と言動がいまいち解らないですから!

急いでブーツを履いて、部屋の鍵を閉めると階段を駆け下りる。

見覚え確かな車を覗くと、運転席でオーナーが手招きをしていた。

「お待たせしました!」

助手席に乗り込み、シートベルトを装着!

「ぜんざいと和菓子と、どっちが好みだ?」

聞かれた内容に、しばらく沈黙。

「オーナー……って、もしかして、甘党でしたか?」

「悪いか」

ムッとした顔で呟かれる。

いえ! 決して悪くはないです!

男性にもいろいろいて、もちろん得手不得手があって当然で……辛いもの好きの人や、しょっぱいもの好きな人もいるでしょう!

でも……いっつもスーツをビシッと着こなし、気障な男性を気取る貴方が……!

「似合わな……っ!」

「百も承知だ。言っておくが、うちの親族はだいたい甘党だぞ。隆幸も例外なく」

白い目で見られて、開いた口を閉じた。まさか桐生氏も……!

「ま、いいか。ぜんざいに決定」

唐突にエンジンをかけて、車を走らせる。

……そんなにぜんざいが食べたかったんですか。
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