Love Cocktail
あれから毎日が忙しくて忘れていたけど、さすがにあまり顔を合わせたくないし。

だから、こっそりと行ってこっそりと帰ろう。

佳奈さんには、ちゃんと会えるかな~。会えたら嬉しいな。

なんて思っている間に、ホテルについた。

雪祭り時期だから、どこも混んでるなぁ。そう思いながら、披露宴会場をホテルの人に確認する。

さすがは由緒正しいホテルだけあって、きちんと人がついて案内してくれるらしい。

クロークにキャリーケースとコートを預ける。

ちょうどお色直しの最中らしいけど、何の勘違いか、係りの人が早苗さんの部屋に案内しますか? と、聞いてくれた。

こっそり来てこっそり帰ったら、早苗さんもガッカリしちゃうかも知れない。

それならお願いしちゃおうか?

「お願いできますか?」

呟くと、係りの人はにっこり微笑んで案内してくれる。

軽いノックに、中から小さな返事があった。

中から開けてもらって入ると、お互いにびっくりした顔をする。

「苺ちゃん!?」

「……うわぁ! 早苗さん、お姫様だぁ!」

早苗さんは、ちょっと古風な白いドレス姿。清楚でとても華やか。

近寄って行くと、とんでもなく訝しい顔をされた。

あの……。

「花嫁さんらしくない顔をしてますよぅ?」

「髪はどうしたのよ。髪は」

言われて、納得する。

「キュウちゃんに切ってもらったんですよ~!」

「もしかして、あっちを離れる前に?」

「はい!」

何故か深~い溜息をつかれた。

「………?」

「苺ちゃん。ちゃんと食べているの?」

「はい?」

キョトンとして目を丸くした。

「こんなに痩せちゃって、服装も……似合うけど、変わったのね?」

言われて、自分を見下ろした。

今日はグレーがかった黒のパンツスーツ。中は赤いキャミソール。

確かに、サイズも2つくらいダウンした。

思えば、いつも夜遅くオーナーと食べに行くのをやめてから痩せて来た。

「ま、細かい話はいいですよ! それより、おめでとうございます!」

手をとってブンブンすると、早苗さんも諦めたように微笑んでくれた。

「来てくれて嬉しい。席は佳奈の隣だから。私が入場した後に、こっそり案内して頂いて?」
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