Love Cocktail
そうですね~。できれば花嫁と一緒に華々しい入場は避けたいです。

ちょうど係りの人が呼びに来たので、早苗さんはそれを伝えてくれて、私はホテルの人に案内されるまま脇の扉に向かう。

「ちょうどキャンドルサービスで、暗い中でございますので、足元にお気を付け下さい」

案内の人に言われて微笑む。

「それは助かっちゃいますね!」

中から、ちょっと派手な音楽が聞こえて来て拍手が沸き起こる。

その間に、こそっと会場に入り込んだ。

とにかく案内された席にストンと座って、溜め息をつく。

注目の的は、シャンパンホワイトのドレスの早苗さんと、黒のタキシード姿の桐生氏。
だけど、さすがに佳奈さんは私に気がついて、互いにこそこそと挨拶しあった。

「さなちゃん、来ないのかもって心配してたよぉ」

そうでしょうねぇ……笑ってごまかして、咳払い。

「早苗さん、綺麗ですねぇ!」

話をそらしてみる。

「うん。綺麗だね~」

「あ、ほら、可愛い!」

「うんうん!」

佳奈さんの注目が、キャンドルサービス中の二人に移った。

これで安心して二人を見ることが出来る。

暗い中をライトアップされた二人が、ひとつひとつのテーブルに蝋燭を燈していく。

今でもキャンドルサービスする結婚式なんてあるんだなーと感心しながら眺めた。

幻想的に、ドライアイスまで……って、寒い。

私、外から入って来たばかりなのですが……凍えそうな冷たさが、足元からはい上がってくるのですが……!

そう思っていた時、見覚えのある姿が目に飛び込んできた。

いつもピシッとスーツを着たオーナー。

今日は、髪をワックスで固めてない感じで、サラサラと額にかかる髪をかきあげている。

ああ、オーナーも髪を少し切ったんだな。元気そうだ……。

早苗さんが、少し腰を屈めオーナーに何か話かけている。

ふわりとオーナーが微笑んで頷いた。
その後頭部を、桐生氏が軽く叩く姿。


……本当に、仲がいいんだろうなぁ。


何だか、ちょっと寂しくなってきた。

蚊帳の外……って感じで。

そもそも、蚊帳の外だったんですけど……再確認? のような。

俯いていたら、軽くポン! と肩を叩かれる。

驚いて顔を上げると、穏やかに微笑んでいる早苗さんと桐生氏がいた。

二人はゆっくりとキャンドルをテーブルに燈し、早苗さんは私の方に身を屈めて来る。

「最後まで、いてくれる?」

あ、それは……。
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