幻が視る固定未来
続かない幸せ、そして奈落へ
それは不意にやってきた。

それはいつの間にかやってきた。

それはすでに決められていた。

この日、死の宣告を聞く羽目になるとは思ってもいなかった。
母上の部屋に行くことが処刑台の階段を上りことだと理解もしてなかった。

考えていたのはどうせ“   ”のことばかり。

どうしてもっと助歌の呼び出しに対して何の警戒も持っていなかったのだろうか。どうして呼び出し場所が母上の部屋であることに疑問を抱かなかったのか。

それは全て“   ”のことしか考えていなかったから。
そして、どうして今日に限ってオレは母上の部屋に行くだけに対して、付添いをつけてしまったのだろうか。
そうすればこんな話、無に還してやれた。初めからこの部屋にはオレと助歌、母上だけでよかったんだ。

だけどここにはいつも考える“   ”が……“有希乃”がしっかりと母上の言葉を聞いてしまっている。
全てのミスはオレにある。有希乃を連れてくるようには言われていない。けど助歌も母上もオレが有希乃を連れてくることを分かっていた。
それでも部屋に入った瞬間、その空気で気が付くべきだったんだ。こんな話のために呼ばれたということに。




死の宣告を放ったのは母上。たった一言、
「木下有希乃を解雇します」
分かりやすいたった一言だけど、全く何が何だか分からない。
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