幻が視る固定未来
「否定できないということは認めたということ。分かりましたね木下?」

さぁ聞かせてくれ有希乃。お前はどっちを信じる。オレの苦し紛れの言い訳か、それとも助歌の正論か。すでに勝負が見えているがオレは有希乃を信じる。
そして無言だった有希乃の口が開かれる。
心臓の音がうるさい。こんなにも緊張するとは。有希乃の声が聞こえないだろ? 少し落ち着けオレ。



「分かった」



あれほどうるさかった心臓が止まったかのように静まる。

嘘だ……嘘だろ? 冗談だろ?

有希乃の一言に湧き上がるのは感情はなんだ? この黒く深い、深くて深くて底のないものが全身を這う。

なんだよ、これ……本当にオレが持つ感情の一つなのか。こんなもの知りたくない、知りたくもない。
有希乃の顔を……見れない。けど、見たい。見れないのに見たい。それはきっと見られないということ。

どうして? 目の前にいるのに。

この感情が全てを妨げる。この全身を多いような闇の感情は……きっと“恐怖”だ。こんなにも恐ろしいものだと思わなかった。
今まで恐怖だと思ったことなど、今の恐怖に比べれば輝く光のようなもの。今までどれほど恐怖のない世界にいたのか痛感する。
だって、有希乃は理解した……オレが…………化け物だと。人ではないと理解してしまったんだ。
これよりも深い闇など、ないだろうな。

「私の言葉を理解した、ということですね」
「そう」

わざわざ助歌は追い討ちをかけてくる。けどそんなことしなくたってオレは認めている。
オレの言葉を取らなかった有希乃だ。きっと今までのオレとは距離が出来た。下手をすればもうオレの召使いとして働けないかもしれない。
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