幻が視る固定未来
部屋に戻っている最中、もちろん木下は足音も立てずに背後を歩いている。
風呂場から部屋までは普通に歩いて五分くらい。しかもオレの部屋は二階で風呂場が一階だから中央にあるでかい階段を使わざるを得ない。

この中央の階段はよく使用人と会いうことが多い。
召使いに会うことも多いが、それはほとんど中央階段で何かをしている訳ではなく、ただ通りすがったというだけ。
だからオレも中央階段に移動している時、ちょうど二階から助歌と出くわしていた。
落ち着いた感じの歩き方からして、特段急いでいる訳ではないのだろう。

お、ちょうどいい。木下が助歌の前でも呼び捨てに出来るか試してもみるか。

「幻視様、ちょうどお風呂上がりのようですね。後で何か冷たい飲み物でも用意いたしますか」

それは確かに嬉しい。木下では気が使いないようなことだろうな。

「よろしく頼む。それと木下に持ってきてもらうから案内してやってくれ」
「かしこまりました。それでは木下、次からはあなたが用意できるように覚えてください」
「了解」
< 25 / 383 >

この作品をシェア

pagetop