幻が視る固定未来
「はぁ……分かりました。そこまで言うならもう少しちゃんと見てみます。それともっと“ここに来たい”と思ってください。もう無理には言わないです。来たくないなら来なければいい好きにして下さい」
「ちょ、待て。助歌、おい」

オレの言葉を背に受けながら助歌は去っていく。
追い掛けられないのは心を一瞬見透かされた反動。正直焦った。あそこまで的確に言われると。

助歌の『来たくないなら来なくていい』という言葉。オレはそれならきっと来ないという判断をしていたんじゃないだろうか。でも結局は来る。それはここに来ないといけないのだから。
何故ならここに来ないことこそ本当に生活が乱れる……いや崩壊したということになる。そんなことを出来る訳がない。
いい加減、覚悟を決めて有希乃に言うべきなのだろうか……。

「無理だ」

その場で崩れるように座り込み恐怖する。
もし有希乃に避けられたら……。
そんな危険を冒してまで出来ることじゃないし、きっとこのままでも大丈夫なんだ。ただきっともっと集中すれば出来るんだ。
だってオレはどうあっても玄武であるのだから。
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