地味な私が恋したヒト
「だけどお前、アイツのこと好きつってたじゃん?告白だってしてたくせに」
桜井くんのお友達がからかうように言う。
桜井くん、お友達に私のこと好きって言ってたんだ……。
嬉しいような、でも何かもどかしいような……そんな気持ちになった。
「は?俺がアイツを好き?ありえねーだろ。あんな地味なヤツ、好きになるわけねぇだろ」
……っ。
わかってた。
私のことなんて遊びだったってことくらい。
だけど、こんな風にハッキリ否定されるとどうしても苦しくなる。
私はもうこれ以上聞くのが辛くて、その場からそっと離れた。
自分の教室に戻ってカバンを手に持って帰ろうとしたけど、どうしてもさっきのことを思い出してしまう。
私、幸せだった。
好きって言われたのも嬉しかった。
でも遊びだってことはちゃんと気づいてたよ?
わかってたよ?そんなことくらい……。
なのに、なんで今こんなに悲しくて、辛いんだろう……。
私、全然わかってなかった。
ちょっと優しくされただけで勘違いして馬鹿みたい……。
あんなにひどいことを言われたのに嫌いになんてなれなくて。
嫌いどころか好きなままなの。
それが悔しかった。
だけど、自分の感情をどうにかすることなんてできない。
私、どうしたら桜井くんのことを忘れられるんだろうー……。
それから私は、答えのないことばかり考えていた。