手に入れる女
「いや、だからただの社交辞令ってことなんじゃないか。こっちは妻子もちなわけだし」
「いやいやいやいや、みえすいたこと言うなよ、今さら。人のものだから余計燃えるってのがあるんじゃないのか? で、どんなコなの」
どんなコと聞かれて、優香の顔がまた頭に思い浮かんだ。
佐藤が惹かれるのは怒った顔だが、つい見とれてしまうのは思い切り笑う時の顔だ。
話に夢中になってうっとり夢見るような顔つきになる時の表情は可愛かった。
「うーん、気は強いけど、素直な可愛い子だよ。笑ったり怒ったりが忙しくて表情がくるくる変わる」
山本は意外だというように声のトーンを変えた。
「何、オマエも気になってんの?」
「何で?」
佐藤は山本の質問の意図がよくわからなかった。
「だって、今までどんな女がすり寄ってきてるか聞いても、困った、困ったっていうばっかりでどんなヤツか答えられた事ないじゃん。
あんまり興味持ってなかったっていうかさ、それが今回は何か違うんだけど」
やはり山本は鋭い。佐藤は慌てて取り繕った。
「まさか。ホラ、オレはこう見えても愛妻家だからさ」
山本は、いつもの顔に戻って急に投げやりになった。
「へーへー。せいぜい奥様を大切になさって下さいよ」
それからは、山本のグチを聞いたり、同級生の消息を聞いたり、グデグデと飲みつつ話しつついつもの楽しい時間を過ごした。