手に入れる女
みえすいた返事だな…、佐藤は自己嫌悪に陥りながら返信した。
はっきり断らないところが未練がましい。実際佐藤は未練たっぷりである。
しばらくしてまた返信が来た。
タイトル:Re:Re:チーズケーキ
本文:それは残念です。(本当に美味しいんですよ!)
コーヒーを買いにいらっしゃるなら
そのときにお渡ししてもいいでしょうか?
時間は合わせますよ。
ーーああもう、何と返事したものか。
何食わぬ顔で、チーズケーキが欲しいフリをして乗ってしまうか。
それとも断固として断るか……
ーー一緒に食べる訳じゃないし、チーズケーキを受け取るだけなら……
自分に都合のいいことを考えて慌ててふるふると頭を振る。
こんなメッセージをもらってしまっては、冷静沈着な佐藤といえども仕事が手につかず上の空だ。
天井を向いて太いため息をついたのを回覧板を持って来た安藤に目撃されたようだった。
「部長、彼女のこと考えてるんじゃないですかー?」
動揺のあまり思いきりむせた。
「な、何を急に言い出すんだ?」
「あれ、部長、どうしたんですか、何か動揺しちゃってます? 部長らしくないですよー?」
安藤は無邪気な声で突っ込んだ。
「あたし、見ちゃったんですよー、この間、部長がきれいなキャリアウーマン風の人とお茶してるの。
やっぱり彼女なんですかー?部長だけは奥さんを裏切るようなことしないと思ってたのに、部長もただのオジサンだったんですねェ」
安藤は大げさにがっかりしてみせた。
「なんだ、小泉さんのことか。彼女とは、ちょくちょくコーヒーショップで顔を合わせることがあって、時々世間話するんだよ」
安藤が言い終わるのをまって、事も無げにいつもの穏やかな口調で説明した。佐藤だってだてに年はとっていない。
「それだけですか~?」
なおもつっこんでくる安藤に笑いながら軽くいなした。
「当たり前だろう、ドラマの見過ぎだよ」
「でも、部長モテるからなー。浮気なんかしたらアタシが許しませんよ。私だって部長のことを諦めたんですからね」
「モテてるの? 全然実感ないんだけど」
ひょうひょうと答える様はいつもの佐藤部長そのものであった。