手に入れる女
本橋は、小泉センセの昨日とはえらい違いに戸惑っていた。
昨日は、脇目もふらずにモーレツに仕事をして、どんどん本橋に仕事を振ってきたと思ったら、今日はぼーっとして全然進んでいない。午前中に渡されるはずのメモもまだ本橋の手元に来てなかった。
仕事の仕上がりにかろうじて遜色はないものの、こんなにムラがあるのは、優香が来てから初めてのことである。
最近の彼女の浮き沈みの激しさに手を焼いている本橋は田崎に愚痴った。
「小泉センセ、今日はおとなしいですねェ。
昨日はえらく張り切ってたのに、こうもテンションがコロコロ変わるとやりにくくてしょうがないよ、実際」
田崎も、本橋に同情するように相づちをうった。
「男にでもふられたんじゃない?」
「ま、あの性格だったら、並の男じゃ勤まりませんよね」
二人がなおもひそひそ話していると、優香の尖った声が飛んできた。
「本橋君、油売ってないで、さっさとこの書類仕上げちゃって!早く先方に送りたいから」
本橋は渡された書類に目をやり呆れた顔をする。
「センセ、それ、朝、渡したじゃないですか」
優香は驚いて書類を見返すと、本橋の言う通り、今朝もらったものだった。
「え?! あ、ホントだ。勘違いしてた、ゴメン、本橋君」
意気消沈して言う。
「センセイ、今日は元気がないですね」
本橋はにやついていた。