手に入れる女
結局その日は佐藤から連絡が来る事なく、優香の持って来たチーズケーキは鞄の隣りに置かれたままだった。
夕方の七時過ぎ、優香は諦めのため息を一つついて圭太に電話した。
チーズケーキを処分すべく圭太を誘うと、優香の手作りチーズケーキにひどく感激した様子で、こじゃれたチーズとフランスパン、それにワインと花束を手に優香のマンションに現れた。
「チーズケーキ、ごちそうになりにきたよ〜」
満面の笑顔で花束を差し出す圭太はどこからどうみても完璧な好青年である。
なのに、優香は隣りにいるのが佐藤ではなくて落胆している自分がひどく自己中心的なワガママ女に感じられてかなり落ち込んだ。
優香はその場に立ち尽くしてポタポタと涙をこぼした。圭太は思いがけない優香の涙に動揺しているようだ。
「何? 何? オレ、何か悪いことした??」
「違うー。圭太の優しさに感動した~」
何とかごまかそうと冗談めかして言うが、成功したとは言えないようだった。
圭太は優香を優しく抱きしめてとんとんと背中を叩く。
「何言ってんの、悲しくて泣いてんだろ、どうしたの?」
「圭太が優しくて~」
同じ言葉を繰り返した。軽口をたたこうと思うのだが、何も思いつかない。
優香の意思に反して涙は止まらなかった。
「優香さん、ホントに意地っ張りだよなぁ。悲しいって言っていいんだよ?」
リズミカルに叩かれるトントンという音を聞いていると少し気持ちが落ち着いて来た。
何も言わずに優しく抱きしめてくれる圭太はホントにいい男だな、と優香は思う。