手に入れる女
「そういえばね、父たち、結局今の家、引き払うことにしたって」
ケーキを口にしながら美智子は佐藤に話しかけた。
「そうなんだ」
美智子の父が数年前に完全に事業から手を引いてから義母がしきりに鎌倉に住みたいと言い出して、二人はあちこち見に行ってたのである。
「この前、みんなで老人マンション見に行ったじゃない? やっぱりあそこに入りたいって、決めちゃったみたいよ。
今、手付けとかなんとか手続きしてて、来月には引っ越すって」
「お義父さんも相変わらず、決めると早いなー」
「そうね。のりさん、引っ越しの時は手伝える?」
「もちろんだよ」
佐藤は、半ば上の空で相づちをうちながら、手元の皿をみて驚いた。
「あれ、いつの間にかショートケーキになってる!?」
「のりさん、半分交換っていったじゃない。おっかしーの。ボケるのはまだちょっと早いよ?」
佐藤は苦笑いするしかなかった。