手に入れる女

佐藤は美智子に連れられて、最近評判になっている、というケーキ屋でケーキをつついていた。

美智子は、目の前にあるショートケーキをうっとりと眺めている。
まるで芸術品のような美しさで、完璧な三角錐をした苺を口の中に入れるのはいかにももったいなかった。

佐藤が頼んだガトーショコラは、この店の人気ナンバーワンで、地味な見かけながら非常に評価の高い一品であった。
やっぱり……チーズケーキを頼むことは出来なくて、店の人に聞いて、ガトーショコラを頼んだのであった。

目では美味しそうにショートケーキを食べる美智子を追っていたが、頭の中では笑いながらチーズケーキを食べる優香の姿がちらちらとする。

ーー彼女はどんな顔でケーキをたべるんだろうか。きっと……、大口を開けながら美味しそうにケーキをぱくつくことだろう。
優香だったら、美味しければ二つでも三つでも食べてしまいそうだ。
佐藤が、そんなに食べるの?なんて呆れても、一向に気にすることなく次々と食べて行くことだろう。

「ケーキが美味しすぎるのよ」

なんて言いながら、ぱくりと口の中に入れて行く様子が手に取るように思い浮かぶ……

なんで、チーズケーキを断ってしまったんだろう。
今さらながら、ケーキを食べる優香を想像して佐藤はどうしようもなく後悔した。
正しい判断だと自分に言い聞かせながらも、優香を切望している自分がいた。

これからケーキを食べるたびに彼女の顔が浮かんでくるのか、それともすぐに忘れてしまうのであろうか。
佐藤は、そんなことばかり考えてぼんやりしている。

「ね、のりさん。半分こしない?」

美智子は、佐藤のガトーショコラも食べてみたかったのか、言うやいなや、佐藤の返事など待たずにお皿を交換しながら、両親の話を始めた。  


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