外国人の彼氏ができました。
私と彼との出会いは高校だった。
私達の通っていた学校は留学生も多く、彼もその内の一人だった。
幼い頃に日本を訪れた彼は、文化や日本人の「おもてなし」精神にとても感動し、留学をするなら日本と決めていたらしい。
ニュージーランドで高校3年生になった彼は、卒業前に日本にラグビーの留学生としてやって来た。
年こそは重ねているものの心機一転、また高校1年生として入学してきたのだ。

彼と初めて会った日は、今でも鮮明に覚えている。
私達は学校が併設する寮で生活していた。
その日はちょうど春休みも終盤に差し掛かっており、早めに帰寮したのだ。
スーツケースを引きずって寮の玄関に着くと、見覚えのない金髪が談話室のソファでテレビを見ていた。
彼の周りには2、3人ほど他の生徒がいたが、いずれも留学生だった。

奇跡的に英語を日常会話レベルなら話すことができた私は、寮監の先生に頼まれ、彼を含む他の外国人留学生の通訳をすることになった。
この学校、留学生こそ多いものの肝心の英語を話せる人が極端に少なかったのだ。

『あの〜、はじめまして。私、今度2年生になる笹山結(ささやまゆい)です。分からないことがあったら何でも聞いてね』

みんな、目を丸くしてこちらに注意を向けた。
その表情は、驚いたような、安堵したような、とにかく初めての異国で、意思疎通できる相手がおらず、みんな不安で堪らなかったのだろう。
真っ先にリアクションしたのは、後に私の彼氏となる人だった。

『僕、アーノルドって言うんだ。助かったよ、一時はどうなるかとみんなで肝を冷やしていたんだ。あー、よかった!』

彼含め一通り英語を主とする留学生と挨拶を交わし、部屋に戻ろうとすると、アーノルドという青年が引き止めてきた。
片手には、ボロボロに擦り切れた単語帳を持っている。

『どうしたの?』

『あぁ、ちょっといいかな。この部分がイマイチ分からなくて』

驚いた。
彼は確か、ラグビーで留学に来ていたはず。
勉強しに来た生徒ではなく、日本に来てまだ日も浅い彼が、能動的に学ぼうとする姿勢が、私は妙に嬉しかった。

それから私達は、食事に行ったり、勉強を教えあったり、お互いの国や趣味についてや好きなことなど、部屋に戻ってもメッセージをやり取りして、気付けば寝るとき以外はほぼ彼と生活を共にしていた。

高校1年生だった去年は、告白されなかったわけではないが特に付き合うこともなく、誰かを好意的に思ったりもしなかった。

しかし、たった数日足らずで目を見張るほどの日本語力を身につけ、持ち前の面倒見の良さと明るさ、ラグビーがとても得意だということであっという間に友達がたくさんできた彼を、私は好きになっていた。

外国人だから、とかそういう理由ではない。
異国で大きな夢を持ち、貪欲に頑張る姿がとてもかっこよかった。


だけどアーノルドには、彼女がいた。
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