ピーク・エンド・ラバーズ


前方の席で繰り広げられる会話に、思わず顔を上げた。

永北大とは県内の国公立大学で、それなりに偏差値の高い学校だ。そして何より、私の第一志望である。
今までの模試では最初こそB判定が出たけれど、それ以降はずっとA判定。そんな自分の結果に、安心はもちろん、当たり前だ、という気持ちも強かった。当たり前、だって私は来たる受験のために今まで真面目に勉強してきたのだから。

それにしたって、津山くんが永北大を志望しているとは驚いた。
E判定――合格率20%以下。夏の時点でのその結果は、結構笑えない。


「いやさすがに無理だろ~……お前もしかして他に大学の名前知らない感じ?」

「馬鹿にしすぎだわ! 知ってるし! 知った上でこれだし! てかそういうお前はどうなの、俺だけ見られんの不公平でしょ」

「まあ安心しろって、俺も部活引退してから本気出すから。ほら見ろ、この輝かしい文字を!」

「お前もEじゃん!」


ぎゃはは、と笑い声が上がって、空いた窓から入ってきた風がそれをさらっていく。
呑気な人たちだな、とあくまで他人事として私はその会話を聞き流していた。

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