染色の恋心
#雨
三河藍は窓の外を見ていた。
藍という名前は自分に合っていると思う。
愛情の「愛」じゃなくて、染め物の「藍」
数学のプリントに書いた自分の文字を見てそう思った。
そういえば、おかしいことがあった。
なぜ、屋上にボールが飛んできたのか。
普通3階にある屋上にボールが届くはずがない。
届くとしても、野球ボールなら可能性があるかもしれないが、バスケットボールが屋上まで届くのだろうか。
数学のプリントを進めながら、頭を回転させて考えた。
外は曇り空になっている。
通り雨かもしれない。
雲は厚く、黒く、豪雨の予感がした。
雲が近づくたび、教室の中は暗くなりやがて蛍光灯を点けた。
紫藤は屋上までボールを飛ばすことができるのだろうか。そもそも、なぜ飛んできたのだろうか。