お見合い結婚~イケメン社長と婚前同居、始めます~

「私、帰ります。藤丸さんに先に帰るってお伝えください」

すばやくソファに置いていたバッグを手に取り、一礼して踵を返す。



「赤井さん。」
社長室を出ようとした瞬間、梶原さんが静かな声で私の背中に声をかける。



「赤井さんがもし、渉さんのこと恋愛対象じゃないのでしたら私に渉さんをください。そして一日でも早く渉さんの前から消えてください。渉さんの想いが強くなる前に」


背中に掛けられた言葉に思わず振り向くと、梶原さんは可憐に微笑んだ。



きっとこの笑顔に騙される人が何人もいるのだろう。
この時ほど、笑顔の裏にある感情に怖いと思ったことはなかった。

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