お見合い結婚~イケメン社長と婚前同居、始めます~
パチン

乾いた音が響く。右の掌が一気に熱を帯びる。



っきまで人の行き来があり、色々な話声がしていたビルの出口の前は、まるで時が止まったように一瞬シンと静まりかえった。


産まれて初めて、ビンタというものをしてしまった。



行き交うスーツ姿のサラリーマンが私たちに冷たいとも興味ともとれる視線を落としながら、わざと少し避けるように行き交い始めた時、

「いてぇ」
「ご、ごめんなさい!!」

左頬を抑えて睨まれた視線に気付いた私は、すぐに現実に戻って、飛び出すようにビルを出て、一目散に逃げ出した。
「お前が忘れようとしても、過去は変えられないんだからな」

桐谷課長の私に向けた叫びを背に受け、私は必死で走った。


< 170 / 291 >

この作品をシェア

pagetop