お見合い結婚~イケメン社長と婚前同居、始めます~
「それよりも、藤丸ハウジングが買収したら、この制服も変わりますよね?こんなダッサイ制服だから、イケメンも寄りつかないんですよ、きっと…」
紗和ちゃんは、自分のベストを摘まみながら、私に向かって口をとがらせる。
そんないじけた表情でも、紗和ちゃんは十分に可愛い。
通年、私たち総務課の制服は薄紫のベストと同じ色の膝丈のスカートで、お世辞にも可愛いとは言えたものではない。
営業課や技術課などいくつかある部署の中で、制服があるのも私たち総務部だけ。
もちろん小さい会社なので、総務課は事務作業だけじゃなくて、受付業務だって、コールセンター業務だって雑用だって行うのだから、制服があることにあまり違和感をもったことはなかったけれど、これが買収された後の会社、ーーー藤丸ハウジングでオシャレでスタイリッシュな制服に変わることを考えると、買収も少しだけ楽しみに思えてくる。
規定通りに白のシャツにスカートは膝丈を守り、髪は仕事しやすいようにとシュシュで1つにまとめるだけの私とは違って、紗和ちゃんはシャツだって少し淡い色味があるものや襟元が可愛らしいオシャレなものを取り入れているし、スカートだって少し膝上にしているし、ヘアスタイルだってネイルだって、メイクだっていつでも完璧にしている。
こんなにいつも完璧な25歳の女子力高めの子に彼氏が居ないのだから、私に彼氏が出来るなんてありえないなぁ。