お見合い結婚~イケメン社長と婚前同居、始めます~
「とりあえず、一旦家に帰ろう」

優しく投げかけられた言葉と少しだけ口角をあげて作られた笑顔。
その笑顔は笑ってなくて、ひどく傷ついていて、それでいて悲しみさえ含んでいた。

私は小さく首を横に振る。


あの部屋に戻ったら、私はこの決意が揺らいでしまうと思ってしまったから。

「一回、しっかりと話し合おう」


あくまで優しく、いつもの穏やかな声なのに、私にnoという選択肢はないというように、しっかり握られたその手の力に、わずかな痛みさえ感じてしまう。

有無を言わせない藤丸さんの言葉に、私は引きずられるようにして、あのマンションへ帰っていった。


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