お見合い結婚~イケメン社長と婚前同居、始めます~
藤丸さんも私も、言葉は出なかった。

2人の間に重苦しい無言の時間が流れていく。


「琴理ちゃん引き留めてしまってごめん。せめて、駅まで送らせて」

重苦しい空気を払しょくするかのように、藤丸さんは貼りつけたような笑顔を浮かべてみせる。


「よしっ」
気合いを入れるかのように小さく呟いてスツールから立ち上がった藤丸さんにあわせるように私も立ち上がる。

ふいにかち合った視線で藤丸さんの瞳が少しだけ潤んでいる事に気付いた。

少しだけ潤んだ瞳は涙のせいなのかもしれない。

一瞬かち合った視線は、藤丸さんの方から逸らされた。

私の顔から視線を背けるようにして、藤丸さんは背中を向けるとリビングのドアの方に向かって歩き始めた。

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